琉球アンダーグラウンド

「An Evening with Ryukyu Underground」

「An Evening with Ryukyu Underground」
琉球アンダーグラウンドセレクト、初のミックスコンピレーションアルバム。
世界のワールドミュージックシーンで活躍の、今まさに旬のアーチストのトラックを収録。さぁ、琉球の案内する“音楽の世界旅行”にTake off!!

■本作について

2004年6月23日リリースの2枚組アルバム「Ryukyu Remixed」に続く本作『アン・イヴニング・ウィズ・琉球アンダーグラウンド』は琉球アンダーグラウンドの二人、キース・ゴードンとジョン・テイラーが選曲した初のコンピレーション盤。

全15曲中、彼らが行った他人のリミックス曲は三曲登場するものの、彼らの曲や沖縄音楽は一曲も登場しない。その代わりにエイジアン・マッシヴ(アメリカやヨーロッパに暮らすインド~パキスタン系の音楽家を中心とした、伝統音楽と現代のクラブ・ミュージックとの融合ムーブメントの事を指します)、またはエイジアン・アンダーグラウンドと呼ばれる、インド系アーティストもしくはインド音楽に影響を受けた外国人アーティストが7組を占める。残りの8組は日本、イスラエル&ガーナ、西アフリカ&フランス、メキシコ、USA、UK、バルカン&NY、オランダと極めて多国籍だ。音楽的にも様々なジャンルが取り上げられているが、全員が伝統音楽と現代のエレクトロニック音楽やポップスの融合を試みている現在活躍中のアーティストという点で共通する。二人のエイジアン・マッシヴへの傾倒は昨年リリースされた二枚組リミックス・アルバム『琉球リミックスド』からも感じられたが、このアルバムは沖縄音楽以外への二人の現在の関心をそのまま反映した内容となっている。

「“琉球アンダーグラウンドとの一夜”というアルバム・タイトル通り、家でも聞ける曲中心にして、でもクラブで踊れる曲もちょっと入れた。70%はメロウな感じ。エイジアン・アンダーグラウンドの曲が多いけど、日本やメキシコやアフリカも入れてるし、僕たちらしくなったと思う。曲順は最後までスムースな流れになるように並べたんだ。僕のある日のDJセットそのままにしたかったんだ、とてもメロウでアンビエントなDJセットだけど。聞いた人たちが僕たちと一緒に音楽の世界旅行に出て、最後に一緒に旅を終えてくれることが僕たちの願いだよ。そして、多分このアルバムを聞いてくれる人の多くは琉球アンダーグラウンドのファンだけど、熱心なワールドミュージックのファンではないと思うんだ。こんな音は初めて聞くという人達も多いと思う。そういう人達に届くのがうれしいんだ。」(キース)

「今回、インドの影響下にある曲が多くなったのはアクシデントだよ。でも現在のワールド・フュージョンにおいてエイジアン・マッシヴの重要性を示したかったのかもしれない。彼らがこの世界をリードしていると思うんだ。その多くはwww.ethnotechno.com(エイジアン・マッシヴの情報サイト)から教わった。彼らには「琉球リミックスド」の時にも随分助けてもらったんだけど、今回もアンサー、バクタ、アル・ファ・X、プレム・ジョシュア、コズミック・ロッカーは彼らを通じて知ったんだ。ラトラマやバナビラは僕たちがコンピ盤を作っていると聞いて直接連絡してきた。ミディヴァル・パンディツとカーシュ・カーレイは僕たちのファンで、僕たちも彼らのファンだから、僕らが彼らのために行ったリミックスを入れたかった。
有里知花のリミックスはしばらくお蔵入りしてたんだけど、以前からリリースしたかったんだ。フレデリック・ガリアーノとボブ・ホルロイドは曲が好きだったから連絡した。ソロモンは僕のソロ・プロジェクトで、彼からも何か引き出したかったからね(笑)」
(ジョン)


大好評 琉球アンダーグラウンド「An Evening with RyukyuUnderground」
「沖縄音楽を愛するキース・ゴードンとジョン・テイラーの2人が、“琉球アンダーグラウンドとの一夜”というタイトルのもと、初のミックス・コンピレーション・アルバムをリリースする。この内容がすごい。今作には沖縄音楽は一切なく、エイジアン・マッシブと称される、アメリカやヨーロッパに暮らすインド~パキスタン系の音楽家が7組も占めており、その他にも日本、イスラエル、ガーナなど本当に多種多様な国のアンダーグラウンド・アーティストが顔を揃えた内容となっている。中盤まで、インド音楽の影響の濃いゆったりとしたアンビエントが続き、後半にかけて南国らしいダンス・トラックへとシフトしてゆく、といった分かりやすい展開でまさに彼等のパーティーに遊びにいったかのような一枚。この音の広がりは自然のなかで聴いたらそれは気持ちいいだろう……。」
(remix 2005.4月号より)

■アーティスト/曲目

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1. ボブ・ホルロイド「ザ・スペース・イン・ビトゥウィーン」
テレビや映画音楽出身のイギリス人作曲家。アフリカやアジア、インドを訪れるうちに次第にエスニックな音に題を求めるようになり、現在までにニューエイジ的なアプローチのワールド・エレクトロニカのアルバムを4枚発表している。ここではスタートにふさわしい透明なダウンテンポ曲。03年のアルバム「ウィズアウト・ウィズイン」から。
2. アンサール「アローン」
アンサールは英国在住のインド系イムラン・アフマッドのユニット。ジャジーなアンビエントに乗るサンスクリット語の歌詞は「全世界の全てのものが幸福でありますように」の意味。同じUKエイジアンのニティン・ソーニーもそうだが、このように西洋ポップスやジャズの影響を独自に消化したアーティストが出始めていることは現在のUKエイジアン音楽家の層の厚さを証明している。
3. バナビラ「スピーチ」
続いてはアンサーと似たアプローチをヨーロッパ側から行っている例。アンビエントやサウンドスケープを得意とするオランダ人プロデューサー、マイケル・バナビラの最新インディアン・ダウンテンポ曲。ヒンディ語の女性ヴォーカルはアリス・コルトレーンとも共演したインド古典声楽家Sandhya Sanjana。
4. コズミック・ロッカー「ミラーズ&ウィンドウズ」
インドの横笛バンスリが流れ、インドのムードが続く。コズミック・ロッカーは、NYのジャムバンド〜ジャズ〜アフロ〜ラテン〜東欧〜DJカルチャーのミクスチャー音楽集団オーガニック・グルーヴスの中心人物で、クロアチアとスイスのハーフであるDJサーシャ・サーノーバーンジャのソロ・プロジェクト。UKのアンサールがジャジーなのに対し、コズミック・ロッカーはよりダビーで不穏なサウンディング、これがNYらしさか。
5. 有里知花「スマイル(琉球アンダーグラウンド・リミックス)」
インドから一転、東アジア〜日本〜琉球の明るく南国仕様のダブへ。有里知花は01年に「I cry」がハワイで大ヒットし、現在もASEAN諸国で注目される日本人女性歌手。ここでは琉球アンダーグラウンドがリミックスした未発表ヴァージョン。以前からビル・ラズウェル好きを公言していた彼らだけに、このリミックスはビル・ラズウェル的なアンビエント・ダブに仕上がっている。
6. アル・ファ・X「アン・インディアン・サマー」
アンビエントな曲間を経てインド古典の太鼓タブラが鳴り始め、再びインドのムードへと移行していく。AL-PHA-Xはイギリス人マルチ楽器奏者デクラン・フリンのソロ・プロジェクト。音大で作曲を学んだデクランはクラシック、映画音楽、ロックを経て民俗音楽に傾倒し、AL-PHA-Xとして活動を開始し、02年にアルバム「GRAVITY」をリリースしている。ここではピアノ中心の西洋音楽のフォーマット上でインド人女性歌手がメロウなメロディーを歌う曲。
7. カーシュ・カーレイ「レッティング・ゴー(琉球アンダーグラウンド・リミックス)」
今度はインド古典側からエレクトロニック音楽へのアプローチ。エイジアン・マッシヴ・シーンのリーダー格、インド系アメリカ人タブラ奏者のカーシュ・カーレイ(ビル・ラズウェルとのグループタブラ・ビート・サイエンスのドラマー)を未発表の琉球アンダーグラウンド・リミックスで。AL-PHA-Xとこの曲では全体のトーンは似ているが、メロディーの作り方がそれぞれ西洋音楽とインド古典音楽で全く異なるのが聞きとれる。エイジアン・マッシヴはこうしてアジア系、非アジア系の音楽家が拮抗することで日々成長していることがわかる。
8. バクタ「プレアー」
マヌエル・ゲッチングのアンビエント・クラシック「E2-E4」をエスニックにしたようなトランシーな四つ打ちが始まる。1960年生まれのオランダ人音楽家バクタは幼少時から音楽家や芸術家に囲まれて育ち、15歳でインドに瞑想の旅に出て、10年間インド、3年間日本で過ごした特殊な経歴の持ち主。現在はオーストラリアのバイロン湾近くの熱帯雨林に住み瞑想と音楽制作の日々を過ごしているという。
9. エク・セントリック・サウンド・システム「エバエ」
西アフリカmeetsファンク! 中盤はアップテンポなトラックが続く。西インド諸島とイスラエル人の血を引くベース奏者ヨシー・ファインが率いるイスラエル&ガーナ混成グループ。エレクトロニック楽器を用いずにドラムやベースで西アフリカ伝統音楽のビートを強化する、これも現在のワールドミュージックの方法論だ。
10. ラトラマ「valiente (ide version)」
インド古典の口タブラ(ボウル)で、またまたインドへと接近する。ラトラマは1979年マドリッド生まれのスペイン人マルチ楽器奏者。幼少時からスパニッシュ・ギターを学び、10代にハードロック・バンドで活動した後、タルヴィン・シンの「OK」でエイジアン・マッシヴを知り、インド古典音楽にのめり込み、独学でシタールやタブラを学んでいる。非インド人によるエイジアン・マッシヴがスペインにまで広がっているとは驚きだ。
11. ミディヴァル・パンディツ「ナイト(琉球アンダーグラウンド・リミックス)」
インド国内からも世界レベルのエレクトロニック音楽家が現れ始めた。ミディヴァル・パンディツはデリー在住のDJ、ゴーラヴ・ナイナとタパン・ラージのユニット。アルバム「ミディヴァル・パンディツ」はカーシュも所属する米シックス・ディグリーズ・レーベルから全世界リリースされている。ここでは未発表の琉球アンダーグラウンド・リミックスで。
12. フスィブレ「オデッセイア(エクステンデッド・ミックス・エディット)」
所変わって、メキシコ北部の町ティファナで現在進行中の伝統音楽meetsテクノのムーヴメント名であり、同時にレーベル名&集団名でもあるノルテックから、メキシカン・パーカッションをフィーチャーしたテクノ・ユニット、フスィブレ。ノルテックは音楽だけでなくデザイン、建築、アートを含む温故知新的ムーヴメントで、エイジアン・アンダーグラウンドならぬメキシカン・アンダーグラウンドだ。
13. フレデリック・ガリアーノ&ジ・アフリカン・ディーヴァズ「メルー・メルー」
ここはマリ? セネガル? 西アフリカ独特の甲高い女性ヴォーカルがアップリフティングな四つ打ちに乗った祝祭的なハウス曲。フレデリック・ガリアーノは西アフリカ諸国を行き来し、現地の女性歌手とハウスやエレクトロニック・ジャズの融合を試みるフランス人DJ/プロデューサー。最新のライブ盤「Sacre Live!」から収録。
14. プレム・ジョシュア「シークレット・プレイス(カーシュ・カーレイ・リミックス)」
エレクトロニック・タブラが左右に飛び交う典型的なエイジアン・マッシヴ・サウンド。プレム・ジョシュアは10代に中東を彷徨い、音楽を吸収し、インドに10年以上滞在しインド古典音楽を学んだドイツ人音楽家。90年代以降はドイツに戻り、インド古典に基づいたフュージョン作品を十数枚リリースしている。ここでは彼の作品をエイジアン・マッシヴの音楽家達がリミックスしたアルバム「Dakini Lounge」からカーシュのリミックスを。
15. ソロモン「エンシオジェン」
最後は冒頭に繋がるような穏やかなダウンテンポ曲。ソロモンは今回初お目見えとなる琉球アンダーグラウンドのジョン・テイラーの別名義プロジェクト。


■琉球アンダーグラウンド プロフィール

アメリカ、カリフォルニア生まれのジョン・テイラーとイギリスニューキャッスル生まれのキース・ゴードンが1998年10月、沖縄で出会った事からユニットがスタート。
ジョンがレコードショップでワールドミュージックのバイヤーを担当していた時、喜納昌吉のアルバムと出会い、その後ネーネーズのアルバム「コザdabasa」を聴いて沖縄に関心を持つ。彼はラジオの選曲やミュージシャンとしても活躍しており、ジャマイカのDJ/シンガー、Uロイの全米ツアーではギタリストとして参加している。
一方、キースはDJ/リ・ミキサー(「ツイン・ピークス」のテーマソングのリ・ミックス等を手掛ける)として活躍。オーストラリア在住時“りんけんバンド”と出会いその後大阪に移り住み、ネーネーズや喜納昌吉のライブに足を運び沖縄音楽と親しんだ。現在は沖縄在住。
2002年3月に1stアルバム「琉球アンダーグラウンド」をリリース。このアルバムは沖縄民謡とクラブミュージックが融合した、エポック・メイキングな作品であり、後のミュージックシーンに大きな影響を与える。2003年に喜納昌吉の「花」をクラブサウンドでリメイク。同年4月に2ndアルバム「Mo Ashibi~毛遊び~」をリリース。さらに2004年6月には、世界的なクリエーター、kid loco(フランス)、Da Lata(イギリス)、Junkie XL(オランダ)、Bill Laswell(アメリカ)らが参加し、上記ファースト&セカンドアルバムをリミックスした2枚組の大作「Ryukyu Remixed」をリリースし、大きな話題となる。2005年3月には初のミックス・コンピレーションCDをリリース。琉球アンダーグラウンドと同じ地平(ワールド・ミュージックとクラブ・ミュージックの融合)に立っている、世界中のクリエーター達の楽曲を取り上げた。2006年には60年代のロック、サイケデリックサウンドと沖縄民謡を融合させたサードアルバム「シマデリカ」をリリースする。