太田いずみ、與那覇桂子、與那覇有羽

「ハララルデ~与那国のわらべうた~」

太田いずみ、與那覇桂子、與那覇有羽「ハララルデ~与那国のわらべうた~」
うたの宝庫、日本最西南端の島、与那国から届いた感動のわらべうた集!

「ハララルデ~与那国のわらべうた~」PV

「ハララルデ~与那国のわらべうた~」PVボーナス・トラック編


■アルバム内容

2020年9月に発売された、與那覇有羽のアルバム「風の吹く島〜どぅなん、与那国のうた〜」に収録されている、与那国のわらべうたメドレー。その歌詞には、深く心を動かされるものがをありました。

特に「北(にち)ぬさんか゚いてぃ」(本作では24曲目に収録)で歌われる「縦糸も横糸も足りないから 雨を降らさないでね お願いお願い」
「天主様の命令だから 生きることも死ぬこともできません だから雨を降らさないでね」、と歌われる歌詞には、深い悲しみを感じました。
このわらべうたは、耳に心地よく響きますが、歌詞には、人頭税(にんとうぜい)時代の過酷な生活が描写されています。過大な税金の支払いを逃れるため、人減らしをせざる得ない、悲痛な現実。課せられた税金の支払いのため、夜明けから、日の入りまで、働きずめのお父さん、お母さん。畑仕事が、はかどるように、どうか雨だけは降らさないでね、と両親不在の家で唄う、幼い子どもたち。無垢な子どもたちが、このようなうたを歌わなければならなかった現実を考えた時、言葉を失います。
本来、日本のわらべうたとは、『わらべうた 日本の伝承童謡』(町田嘉章・浅野健二編)によると、子どもの遊びのためのうた=遊戯うたが中心を占め「遊戯を面白く連続せしめるための韻律的運動が主眼であるため、必ずしも歌詞内容には重きを置かない」と記載されています。「北ぬさんか゚いてぃ」は、そのように一般的に規定されるわらべうたとは、全く違う内容のものです。

また、今回のアルバムに収録された「マイナルハトゥテイ」では、「前になったものは後ろにさがれ 後ろになったものは前になれ」と歌われています。
一時の順位を競うのではなく、お互いが譲り合う大切さを歌った、とても素敵なわらべうたです。

与那国のわらべうたに関心を持った私は、與那覇有羽、いずみの兄妹に、現存する与那国のわらべうたについて聞いた所、その数は約30曲以上あるとのこと。ならば、是非、そのうたを録音したいと申し出、形になったのが本アルバムです。
現在、沖縄本島在住の太田(旧姓は與那覇)いずみは、与那国に帰る度に、島の教育委員会に保存されている資料に当たり、また島在中のお年寄りに実際に歌ってもらい、それを録音するなどし、歌詞、メロディーを可能な限り検証した上で、今回のレコーディングに入りました。
また、現在、沖縄本島の豊見城(とみぐすく)市で保育園園長をしている、与那国出身の米盛たみ子さんの元にも足繁く通い(米盛さんは子ども時代、本アルバムに収録されているわらべうたを歌っていました)、さまざまな指導を受けました。米盛さんは「今回の録音を聞かせてもらって、あの頃の暮らしが、まるで映画を見るように、思い出してきました」と、仰っしゃいました。

与那国のわらべうたが、このようにまとまった形で全国に紹介されたことは、ほとんどありません。多くの方に「与那国のわらべうた」に触れて頂き、それぞれのうたに込められた思いや、歴史的背景に思いを馳せてもらえればと思います。

なお、25曲目以降、ボーナストラックでは、綱引きのうたである「アガリナ・イリディナ」など、多彩な与那国の民謡を収録しました。

──リスペクトレコード 高橋研一


■収録曲

試聴 クリックでウインドウが開きます。

①ハララルデ(ハルラルデ)
うた:太田いずみ、與那覇桂子、與那覇有羽
与那国で育った人で、わらべうたと言えば、まずこのうたです。
②アンダナビティ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
バンギリ バンギリという言葉が印象的です。両親が帰るまでに、鍋の油が早く熱くなりますように、と歌われています。
③ミトゥヌハチ(ディラブディ風)
うた・三線:太田いずみ うた:與那覇桂子
朝寝坊するなよ、と唄われるわらべうたです。
④ナガヤマ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
このうたも「ハララルデ」と並んで、与那国では大変ポピュラーです。人頭税が課せられた時代のうたです。
⑤カタブルハマ
うた:與那覇有羽
ハッツァ ハッツァという言葉が印象的です。魚を取り逃した様が、うたわれています。
⑥イユヌミ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
与那国のわらべうたがとてもキャッチーなのは、印象的な言葉の響きが、歌詞に散りばめられているからです。このうたでは、グディ グディ。
⑦ドゥナンダギダッティ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
鳩がお腹をふくらまして ふるえている。どうして?とうたわれています。
⑧数え唄
うた:與那覇有羽
魚の名前をあげてうたわれる、数え唄です。
⑨ツウンダミ
うた:與那覇桂子
かたつむりを這わせて競争させる際に、子どもたちが夢中になってうたったわらべうたです。
⑩イチカヤナンティ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
カユイ カユイとうたわれる遊戯唄です。
⑪ニーディング
うた・法螺貝:與那覇有羽 うた:太田いずみ、與那覇桂子、山口和昭
このうたは、子どもたちが獅子舞の後を追いながらうたいました。悪魔、悪霊を追い払ううたです。
⑫トゥヤヌダマトゥ
笛:山口和昭 うた:太田いずみ、與那覇桂子
このうたでは、握り拳で、活を入れさまがうたわれています。
⑬ウチヌハン
うた:太田いずみ、與那覇桂子、與那覇有羽、山口和昭
動物の足を数えながら遊ぶさまがうたわれた、わらべうたです。もうこれ以上数えられないと、ガフカと言います。
⑭ミトゥヌハチ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
3曲目収録のうたの別バージョンです。
⑮カタミ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
両親が不在の時、子守りをする子どもがうたった、寝かせうたです。
⑯サンガチサニティ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
ミリバン ミリバンという言葉が印象的なこのうたは、いつ見ても小蟹は小蟹、とうたわれています。
⑰ディククティ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
木登りをする際にうたいました。登れない子は、犬や猫に噛みつかれるぞ!
⑱マイナルハトゥティ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
前になったものは後ろに下がれ、後ろになったものは前になれ、とうたわれています。
⑲マンタブルダマミ
うた:太田いずみ、與那覇桂子
マンタブル、ハンガマヌと言葉遊びをしながら、子どもたちがかけて行きます。
⑳ダンナサン
うた:太田いずみ、與那覇桂子
ダンナサン(お客さん)が来ますよ。火を持って来なさい、お茶を沸かしなさい、とうたわれています。
㉑ハナヌイシャドウ
うた:太田いずみ
うたのタイトルは、花ぬ伊舎堂、となります。元気な子どもを産みなさいね、と歌い込まれてます。
㉒アンガマ
うた:太田いずみ、與那覇桂子 掛け声:與那覇有羽
アンガマとは、お盆の三日間、家々を廻り、念仏を唱え、舞踊を披露する集団です。子どもたちも、大人に混じって、家々を廻り、このうたをうたいました。
㉓ナガヤマタナガ
うた:與那覇有羽
4曲目に収録の「ナガヤマ」の別バージョンです。
㉔ニチヌサンアイティ
笛:山口和昭 うた:太田いずみ、與那覇桂子
過酷な人頭税を負わされ、生きるにも耐えられず、かと言って死ぬことも出来ない。せめて雨だけは降らさないで。と家で両親を待つ子どもがうたいます。

ボーナス・トラック

㉕でんさ節
うた・三線:太田いずみ 笛:よなは徹
八重山を代表する教訓歌を、与那国の風景を折り込みながら、独自の歌詞でうたいます。
㉖与那国十番口説
うた・三線:與那覇有羽 笛:よなは徹 太鼓:與那覇桂子
与那国の名勝を数えうたにし、我が素晴らしき与那国に捧げます。
㉗とぅばるま
うた:太田いずみ
八重山民謡を代表するうたを、与那国独自の歌詞にしました。島のきびしい生活が歌いこまれています。
㉘アガリナ・イリディナ 
うた・笛:山口和昭 うた・掛け声:太田いずみ、與那覇桂子、與那覇有羽 太鼓・銅鑼・掛け声:永井秀樹、ほか2名
豊年祭で行われる綱引きの際に、うたわれます。
㉙すんかに
うた:太田いずみ
絶海の孤島であった与那国を離れるにあたり、今度はいつ戻って来られるであろうかと、例えようもない深い別れの気持ちを歌い込んでいます。
㉚どぅんた
うた:與那覇有羽 うた・掛け声:與那覇桂子 笛・掛け声:山口和昭  掛け声:太田いずみ 太鼓・銅鑼・掛け声:永井秀樹、ほか2名
心踊る、与那国の祝祭歌です。


■レコーディングデータ

制作:太田いずみ、小浜司、高橋研一
録音エンジニア:浜里稔
録音スタジオ:サードガレージスタジオ(沖縄市)2021年3月20日〜22日
ミックスダウンエンジニア:田中三一、飯塚晃弘
マスタリングエンジニア:田中三一
ミックスダウン、マスタリングスタジオ:studio Chatri